【墜落制止用器具(安全帯)】コレを押さえたら選べる
フルハーネス型墜落制止用器具を購入しようと思ってお店や販売サイトを見てみると、たくさんの種類があってどれを選べばいいのかわからなくなってしまいませんか。
会社等で「規格変更になるから新規格の商品に買い替えて」と依頼を受けた、知識のない方も必要なポイントを押さえることで間違いが起きないでしょう。
金額やデザインだけで選ぶと作業に適していない場合があるので注意が必要です。
ここではフルハーネス型墜落制止用器具を選ぶ際のコツを解説していくのでぜひ参考にしてください。
1、選び方のコツ
墜落制止用器具は細かく分けるとたくさんの種類がありますが、作業に合う「ランヤード」と自分の体に合う「サイズ」を選べば失敗することはありません。
①ランヤードの選び方
ランヤードはコネクタ(ハーネス側フック)、フック、ショックアブソーバ、ロープなどで構成されており、フックの数(ロープ本数)やロープの形状、ショックアブソーバの種類によっていくつかに分類されます。
それぞれに違った特徴があるので正しく理解して自分に合ったものを選びましょう。
■フックの数(ロープ本数)
フックの数と記載しましたが、俗にいう1丁掛けタイプと2丁掛けタイプのことで「シングルランヤード」や「ダブルランヤード」と呼ばれています。
足場上を移動するときなどフックを掛け替える必要がある場合、1丁掛けだとフックをかけ替える際に一度外さなければいけないので、一時的に無綱状態が発生してしまいます。
墜落事故を防ぐためにも無綱状態は絶対に避けなければなりません。
フックの掛け替えが必要な場所では2丁掛けを使用して、移動先に片方のフックをかけてから元のフックを外すようにしましょう。
親綱や安全ブロックなどを使用してフックをかけ替えなくて済む状態であれば1丁掛けでも問題ありません。
※親綱や安全ブロックなどについては別記事で詳しく解説しています。
■ショックアブソーバの種類
ショックアブソーバは墜落時にロープが伸びきったときに身体にかかる衝撃をやわらげるための装置で第一種と第二種の2つがあり、仕様や選び方については次のように定義されています。
厚生労働省「墜落制止用器具の安全な使用に関するガイドライン」
第3 用語 (7)ショックアブソーバ墜落を制止するときに生ずる衝撃を緩和するための器具をいう。第一種ショックアブソーバは自由落下距離 1.8 メートルで墜落を制止したときの衝撃荷重が 4.0 キロニュートン以下で あるものをいい、第二種ショックアブソーバは自由落下距離 4.0 メートルで墜落を制止したときの衝撃荷重が 6.0 キロニュートン以下であるものをいう。
第4 墜落制止用器具の選定 2 墜落制止用器具の選定(ワークポジショニング作業を伴わない場合) (1)ショックアブソーバ等の種別の選定 ア 腰の高さ以上にフック等を掛けて作業を行うことが可能な場合には、第一種ショックアブソーバを選定すること。 イ 鉄骨組み立て作業等において、足下にフック等を掛けて作業を行う必要がある場合は、フルハーネス型を選定するとともに、第二種ショックアブソーバを選定すること。 ウ 両方の作業を混在して行う場合は、フルハーネス型を選定するとともに、第二種ショックアブソーバを選定すること。 |
ショックアブソーバの種別 | 第一種 | 第二種 |
---|---|---|
ショックアブソーバ単体試験での 自由落下距離 |
1.8m | 4.0m |
衝撃荷重 | 4.0kニュートン 以下 | 6.0kニュートン 以下 |
ショックアブソーバの伸び | 1.2m以下 | 1.75m以下 |
フックの取付位置 | 腰より高い位置 |
腰より高い位置から足元付近まで |
この文章を読んで
と思った方がいるのではないでしょうか。
間違いではありませんが、第二種を採用したからいつでも腰より低い位置にフックをかけても良いということではありません。
フックをかける位置が低くなるほど墜落したときに落下する距離が長くなってしまいます。
規格改正によりフルハーネス型に第二種を選定すれば足元の高さまでフックを掛けられるようになりましたが、第二種は第一種に比べてショックアブソーバの伸びが大きいので衝撃荷重が増大し身体にかかる衝撃が大きくなります。
また、低い位置にフックを掛けるとランヤードやフックが損傷する危険性も高くなります。
基本的には第一種を使用し、腰より高い位置にフックを掛け作業を行う。
フックを掛ける場所が足元しかない場合のみ第二種を使用することが推奨されています。
たとえ足元にフックをかけることができる仕様であっても腰より高い位置にフックをかけることができるのであれば、必ず腰より高い位置にフックをかけてください。
あくまでもやむを得ない場合のみ足元にフックをかけるようにし、可能であれば高い位置にフックをかけられる設備を取り入れて作業をするようにしましょう。
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■ロープの形状
親綱などの取り付け設備とフルハーネスを繋ぐロープ(ストラップ)部の形状によっても分けることができます。
ロープ式
ロープ式は伸び縮みしないロープが使われており、墜落した際はランヤードの有効長さ分だけ落下することになります。
ロープ式はシンプルな造りになっているので非常に軽く安いのが特徴です。
伸び縮みしないので使い方によってはブラブラしてしまい邪魔に感じることがあるかもしれません。
伸縮式
伸縮式は有効長さが約1,100mmから1,600mmまで伸び縮みするタイプで、使わない時は縮んでいるので移動時の引っ掛かりなどを防ぐことができます。
伸びてしまえばロープ式と長さが変わらず、落下距離もランヤードの最大有効長さ分になります。
巻取式(リール式)
巻取式はリール(巻取り器)が付いており、余分なストラップを巻きとることができるので、ほかの形状と比べるととてもコンパクトに収まります。
作業時はストラップが引き出されるのでロープ式や伸縮式と作業性は全く変わりません。
リールが付いている分だけ重たいイメージがあるかもしれませんが、最近では軽量化されたものが発売されているので重量も気にならなくなりました。
巻取式には衝撃が加わるとランヤードが引き出されるのを防ぐ緊急ロック機能が付いている物があり、墜落時の自由落下距離を最小限に抑えることができます。
低い位置から落下した際にランヤードが伸びきって地面に激突しないためにも緊急ロック機能が付いたものが推奨されます。
②サイズ「大きめ・小さめ」
フルハーネス型墜落制止用器具は体の大きさや使用可能質量によって適用サイズが決められているものがほとんどで、メーカーによって「Sサイズ~LLサイズ」や「小さめ~大きめ」と表記が異なります。
使用可能質量は85kgや100kgが標準とされ、メーカーによって130kgや150kg対応品なども販売されています。体重ではなく腰道具などの装備を含めた総重量で算出するので注意してください。
パッケージや商品購入ページを見ると下のような図や一覧表が掲載されているので、仕様を確認して適切なサイズを選びましょう。
ただし、防寒着の着用や体格によって個人差があるので、あくまでも選定時の目安としてください。
③メーカー特徴
現在ではたくさんのメーカーがフルハーネス型墜落制止用器具の製造をしていますが、ここでは「谷沢」「サンコー(タイタン)」「藤井電工(ツヨロン)」の3社をピックアップして特徴を解説します。
■谷沢
1950年に日本で初めてハーネス型安全帯の製造を開始したパイオニアであり、装着した時のフィット感や作業性を求めて改良された商品が販売されています。
谷沢製のフルハーネス型墜落制止用器具に採用されている大きな特徴は「フリーサイズ」であることでしょう。
肩、胸、腿の3ヶ所でサイズ調節が可能で、1つの商品で従来のフルハーネスのS/M/Lサイズがカバーされています。(身長(cm)+体重(kg)=190~290 )。
※一部商品によっては通常サイズとSサイズに分かれているものがあるので、詳しくは商品ページでご確認ください。
【新規格対応】ST#571A 匠II 軽量バックル(SK)
2丁掛け伸縮ランヤードセット 5701-2TRG(第1種)
どのような体型の方でもフィットする自然な装着感のX型スタンダードモデル。
◆背中:X型 脚:水平型
◆フリーサイズ
◆2丁掛け
ST#571A 匠II 軽量バックル(SK)
1丁掛け巻取式ランヤードセット5701-SQG(第1種)
どのような体型の方でもフィットする自然な装着感のX型スタンダードモデル。
◆背中:X型 脚:水平型
◆フリーサイズ
◆1丁掛け
その他、背中Y型スタンダードモデル・耐久性に優れた金属製の作業ベルトアタッチメントを採用したプロ仕様のシンプルモデル・女性用に設計された女性専用モデルもあります。
また、各種ランヤードのカスタムが可能です。
谷沢製作所の商品はここからチェックすることができます! >>谷沢製作所の安全帯一覧 を見る |
■サンコー
「サンコー」という会社名になじみが無くても「TITAN(タイタン)」なら聞いたことある人も多いのではないでしょうか。
有名なTITANブランドを手掛けるサンコーのフルハーネス型墜落制止用器具は他社には無いデザイン性や独特の機能性が備わったモデルが販売されています。
【新規格対応】PANGAEA CANYON 新規格フルハーネス
2丁掛け伸縮ランヤードセット(第1種)
フルハーネスにも着る楽しさを。手にしただけでわかる「軽さ」。
ベルトカラーに合わせたスタッフバッグ付き。
◆背中:X型 脚:V型
◆M/Lサイズ
◆2丁掛け
PANGAEAシリーズ
【新規格対応】CANYON(高視認)モデル
アパレルデザイナーが手掛けた細部までこだわり抜かれたスタイリッシュモデルに高視認タイプをラインアップ。彩度の高いベルトと再帰反射材で高い視認性を確保しました。
ベルトカラーに合わせたスタッフバッグ付き。
◆背中:X型 脚:V型
◆S/M/L/LLサイズ
その他、サンコー(TITAN)の商品としてデザイン性の高いもの・消臭機能・形状保持機能・フィット性に優れたもの等、全11シリーズが展開されています。
サンコー(TITAN)の商品はここからチェックすることができます! >>サンコー(TITAN)の安全帯一覧 を見る |
■藤井電工
「ツヨロンブランド」で有名な藤井電工のフルハーネス型墜落制止用器具は規格改定に伴って全製品の構造や強度が見直され、ラインナップが一新されました。
フルハーネスを使うシーンに合わせて作業効率を高めるものや装着性のいいものなど7シリーズが開発されています。
【新規格対応】レヴォハーネス TH-508
ツインノビロン 2丁掛け伸縮ストラップ式ランヤード(第1種)
あらゆる高所作業に適したフラッグシップモデル(最上位モデル)。
◆背中:X型 脚:V型
◆S/M/Lサイズ
◆2丁掛け
【新規格対応】黒影ハーネス TH-504
ツインノビロン 2丁掛け伸縮ストラップ式ランヤード(第1種)
見た目も動きもスタイリッシュな、束縛感のない水平型腿ベルト採用モデル。
◆背中:X型 脚:水平型
◆S/M/Lサイズ
◆2丁掛け
その他、藤井電工(TSUYORON)の商品として長時間作業を快適にするスタンダードモデル・最軽量モデル・多くの工具類を装着する職人用・体に合わせて調整できる女性専用モデル等、全7シリーズが展開されています。
藤井電工(TSUYORON)の商品はここからチェックすることができます! >>藤井電工(TSUYORON)の安全帯一覧 を見る |
2、業種別オススメ装備
上でメーカーがどのような製品を出しているか紹介しましたが、次は業種別にどのような装備があるのかを紹介します。
■柱上作業用
フルハーネスSV型(電力10社配電用 共通規格品)
感電事故を抑制するために作られたノーリング型フルハーネスで、胸部および背部のランヤード接続部にD環金具を使用していません。
ワークポジショニング用器具(柱上安全帯)
今までU字吊り安全帯として使用していたものが当てはまります。
体重をかけて作業するので、幅広の補助ベルトを採用して長時間の作業を可能にしたものが多く販売されています。
※墜落制止用器具ではないのでワークポジショニング用器具単体での使用は絶対にやめましょう。
必ずフルハーネス型墜落制止用器具と併用してください。
柱上作業用ランヤード
柱上作業に適したフルハーネス用ランヤードで、足場ボルトなどに構造物側フックを取り付けて使用します。
■傾斜面作業/林業用
傾斜面作業用ハーネス
転落防止用ロリップの取付けが目視で確認できるように胸部にD環が付いており、水平型腿ベルトの採用によって拘束感が少なく動きやすい造りになっています。(新規格対応)
傾斜面作業用胴ベルト
胴ベルトと腰やお尻を覆う幅広のバックサイドベルトを組み合わせたもので、足場の不安定な急斜面で作業する際にバックサイドベルトに腰をかける状態で体重を預けて長時間の作業を可能にしています。
林業用安全帯
林業の枝打ち作業を想定したU字吊の安全帯で、ロープの芯にワイヤを撚り込むなど、刃物との接触に考慮した造りになっています。
※柱上作業用と同様にU字吊りは墜落制止用器具ではないため単体での使用はできません。
必ずフルハーネス型墜落制止用器具と併用してください。
■レスキュー・消防用
レスキュー活動用ハーネス
救助活動専用ベルトで、短時間で装着ができて動きやすいことが重視されています。
被災者吊上げベルト
被災者を危険から守りつつウインチなどで吊上げるためのベルトで、片手で素早く締め付けることができる造りになっています。
まとめ
フルハーネス型墜落制止用器具は細かく分類され、メーカーごとに特徴があることが理解できたかと思います。ここで紹介した内容を参考に、ご自身が使われる作業にあった器具やサイズを選定して安全な作業ができるようにしましょう。
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