【墜落制止用器具(安全帯)】正しい着用方法と使用時の注意事項

墜落制止用器具の正しい着用方法と使用時の注意事項

墜落制止用器具はただ着用してさえいれば良いものではありません。正しい着用方法と注意事項を守らなければ万が一墜落してしまったときに効果を発揮せず重大災害になりかねません。 ここでは「墜落制止用器具の正しい着用方法」「使用時の注意事項」を解説していくので正しく理解しておきましょう。  

1.フルハーネス型

フルハーネス型墜落制止用器具は以下の手順で着用します。 確実に墜落制止用機能が働くようにするためにも正しい手順で着用してください。 ここでは使用前点検は済んだものとして解説します。使用前点検については別のページで解説しているのでご確認ください。  

■着用方法

腿、胸部のバックルを外して背中のD環を持ち、背中や肩のベルトがねじれたり絡まったりしていないことを確認します

肩ベルトに腕を通して背負うように着用してください。 この段階ででん部のベルト位置を確認します。 位置が悪ければ肩のベルトを調節して、でん部のベルトがお尻のすぐ下に当たるようにします。 左右のベルトが同じ長さになるように調節してください。

胸ベルトバックルを連結します。 クリップの場合は差し込み、ワンタッチバックルの場合は「カチッ」と音がするまで差し込みます。 肩ベルトは下に向かって垂直に下がるように着用します。


悪い例
前から見て肩ベルトが胸の中央に向かって引っ張られるような形にならないようにしましょう。

腰ベルトのバックルを連結します。 作業ベルト、胴ベルトがある場合はこの段階で装着してください。

腿ベルトがねじれないように腿部を回し、バックルを連結します。の時に左右のベルトが交差しないように注意しましょう。 脚のベルトを調節して脚のサイズにフィットさせましょう。

悪い例
脚ベルトは緩すぎないようしっかり身体にフィットさせましょう。

背中や胸、腿部など全体的にたるみがでないようにバックルでベルトの長さを調節します。 ゆる過ぎず、キツ過ぎないように装着できていることを確認しましょう。 しゃがんだり屈んだりしてずれたり、キツかったりする場合は調整しなおしてください。 装着後に各部のベルトやD環などがおかしな位置になってないか確認しましょう。間違っていた場合は必ず適切な位置になるように初めからやり直してください。

 

2.胴ベルト型

胴ベルト型は構造が単純な分、正しく着用しておかなければ万が一のときに身を守ることができません。着用方法は単純ですがポイントはしっかり覚えておきましょう。 この項目でも使用前点検は済んだものとして解説していきます。  

■着用方法

胴ベルトは腰骨のところに装着し、D環の位置が身体の真横かそれより後方に来るようにします。
バックルに刻印された順に胴ベルトを通し、確実に締めつけます。この時にベルトがバックルの端から10cm以上出ていることを確認しましょう。
 
もし10cmより短い場合は抜けの恐れがあるので、長い胴ベルトに交換しましょう
 

胴ベルト型の注意事項

①正しい位置に着用すること 胴ベルトは墜落制止時に身体への負担を減らすために正しい位置に着用しなければなりません。 腰骨より高い位置(ウエスト)に胴ベルトをつけている人を見かけますが、墜落した際に内臓を圧迫して痛めてしまうので絶対に腰骨にかかるように装着しましょう。 反対に股付近の腰より低い位置に胴ベルトをしていると、重心が高くなってしまい墜落した際に1回転して抜け落ちたり、骨折したりする恐れがあります。 また、ベルトの締めつけがゆるい場合は墜落した際にベルトの内側で身体が回転してしまい、D環が身体の前になる状態で吊り下げられ、背骨の骨折や脊髄を損傷してしまう可能性があります。 ②分厚い防寒着の上に着用しないこと 冬場に分厚いジャンパーなどの防寒着の上に胴ベルトをしている人がいますが、墜落した際に衣服がずり上がって身体とベルトの間に大きな隙間ができてしまいます。 薄手のものであれば特に問題はありませんが、厚手のものを着るのであれば作業服の上に胴ベルトを着用してその上に防寒着を着るようにしましょう。

3.装着について

上では墜落制止用器具の着用方法についてのみ解説しましたが、ここではさらに細かく「バックルの通し方」とフルハーネス型に腰ベルトを取り付ける「ベルトの装着方法」を解説します。  

①バックルの通し方

バックルの通し方はどの形メーカーであっても同じ手順になります。
バックルのスライドをずらしてベルトを内側から外側に向かって通します。   ベルトを締め付けたらバックルのベルト押さえ部に通して固定します。
フルハーネス型や胴ベルト型の一部はベルトがワンタッチ式バックルになっているので、その場合は「カチッ」と音がするまで奥までしっかり差し込んで連結しましょう。
 

ベルトの装着方法

フルハーネス型墜落制止用器具だけでも墜落制止に効果があるのですが、作業をするのに腰道具を使いたくて胴ベルト型と併用したいと思うことがあるかと思います。 フルハーネス型を着用した上から胴ベルトを着用しても問題はありませんが、フルハーネス型と胴ベルト型を連結させることで、腰道具の重量を腰だけで支えていたものが腰と肩に分散されるので胴ベルト型単独で使用するよりも重さを感じにくくすることができます。
① フルハーネスの腰部に胴ベルト固定板が付いている場合は利用し、付いてなければ別売りのベルト固定板(ベルトホルダー)を腰骨の位置付近に取り付けます。 ② 固定板の穴に胴ベルトを通して連結させます。後付けで装着可能な腰当ても販売されているので、必要であれば取りつけるとよいでしょう。

4.使用時の注意事項

墜落制止用器具は正しい着用方法だけでなく、正しい使い方が必要です。 着用方法だけ良くても使い方を間違えてしまうと墜落した際の衝撃をやわらげることができないだけでなく、墜落自体を制止すること自体ができなくなってしまいます。 次にあげるD環の位置やフックのかけ方は間違える人が多いので正しく覚えて、知らない人・間違っている人には正しい方法を教えるようにしましょう。  

①D環の位置

着用方法の項目でもD環の位置について触れていますが、D環は墜落して宙吊りになったときに身体の向きやバランスをとるための重要な役割があります。 D環の位置が変わるだけで身体にかかる負担が大きく変わり、本来ならば軽症で済むものが最悪の場合は死亡事故に繋がるかもしれません。 ここで紹介するD環の位置は絶対に守るようにしてください。 フルハーネス型 フルハーネス型は大きく分けて背中だけにD環があるもの(バックD環)と、背中と胸部にD環(フロントD環)が付いているものがあります。D環の位置は墜落したときに頭を上にしてたて向きにぶら下がるような位置に取り付けなければなりません。   背中のD環は肩甲骨の中央付近にくるように調節しましょう。取り付け板の部分でベルトを調整すれば位置が替えられます。胸部のD環もできるかぎり胸の中心に来るように調節しましょう。 注意しなければいけないのが、D環とよく似た形をしているフックハンガーです。形状は似ていますがD環ではありません。フックハンガーは使っていないランヤードをかけておくためのものなので間違えないようにしてください。
胴ベルト型 胴ベルト型のD環は身体の真横より後ろで、できるだけ中心にくるようにしましょう。理由は墜落した時の身体の曲がり方を想像するとわかりやすいのではないでしょうか。 D環の位置は身体の真横でも良いとはされていますが、宙吊りになった際に身体が横向きに「くの字」に曲がるように負荷がかかってしまいます。 このときに背中の中心付近にD環があれば下向きにぶら下がり、前面に向かって「くの字」に曲がるように負荷がかかるので、他の向きに比べると負荷が小さく済みます。 D環だけでなくランヤードの巻取器も動作した時の形状を考えて、D環と同じように身体の真横から後ろにくるように取り付けなければいけません。 実際に体験してみるとD環を真後ろにした状態でぶらさがっても腰に相当な負荷がかかるのがわかります。墜落してさらに重力が加わった状態では相当な衝撃になるでしょう。    

②フックのかけ方

ランヤードのフックは構造から主軸方向(縦向き)の力に強く、横向きの力やねじれ方向の力には非常に弱い特徴があります。 現場によってはフックをかけるのが困難な場所があるかもしれませんが、どのようなかけ方をしても同じ効果が得られるわけではありません。フックのかけ方を間違えるとフックが破損して外れたり、ランヤードが切れたりする恐れがあるので、正しいかけ方は絶対に覚えておきましょう。 フックのかけ方は3種類あり、それぞれに正しいかけ方があります。   ■直接かけ
[正しいかけ方] [誤ったかけ方]  
フックは主軸の方向と墜落制止時にかかる力の方向が一致するように取り付けて使用しなければいけません。特に横向きの力に弱いので、横向きに力が加わるようにフックをかけてはいけません。
■回しかけ
[正しいかけ方] [誤ったかけ方]
フックの主軸や先端だけに力が加わるかけ方は負荷がかかると横向きの力やねじれの力がかかりフックが破損してしまいます。また、図のようにフックの内側をロープが1周するような形でフックをかけると、フックの破損やロープの摩耗に繋がるのでやめましょう。
■穴かけ
[正しいかけ方] [誤ったかけ方]
フックの先端がけは負荷がかかった時にフックが変形したり、開いたりする恐れがあるので止めましょう。
■その他の注意点 フックが正しくかかっているか(外れ止め装置が閉じているか、安全装置が構造物との接触で押されていないかなど)を目視で確認するようにしましょう。 フックはかけ方のほかにかける場所にも注意が必要です。 鋼管の先端などランヤードが抜けたり外れたりするところにはかけてはいけません。
フックは足場や手すりなど強固なものにかけるようにしましょう。
フックが滑り落ちるところにかけてはいけません。
ランヤードが角でこすれないように注意しましょう。
墜落した時に振り子状態にならないようにフックをかけてください。
ロープ式ランヤードでフックを対象物に掛けていない(使っていない)時は、フックを休止フック掛けに掛けるかロープ収納袋に納めておきましょう。 巻取式のランヤードでフックを対象物に掛けていない時も同様に、ストラップを巻取器に収納してフックを休止掛けに掛けるかフック収納袋に納めておきましょう。
   

まとめ

墜落制止用器具の正しい着用方法と使用時の注意点について解説しました。 繰り返しになりますが、墜落制止用器具はただ着用するだけでは意味がありません。ここで解説した使用時の注意事項を守ることで初めて効果が発揮されます。 覚える内容がたくさんありますが、自分の身を守るために必要なことなので絶対に覚えて忘れないでください。 また、職場や現場で着用方法が違う人や注意事項を守れていない人がいた場合は注意をして、自分だけでなく仲間の安全も守るように心がけましょう。  

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