安全管理
墜落制止用器具を使用して安全に作業するためには日頃からの正しい管理、点検が必要です。
壊れたまま使用したり古くなったものを使用したりしていると、万が一墜落してしまった際に墜落を阻止する機能が失われているかもしれません。
ここでは墜落制止用器具の点検方法や保管・手入れ方法、使用期間などを解説していくので、すでにご存じの方は復習を兼ねて、知らない方は必ず覚えておくようにしてください。
1.点検方法
点検は管理責任者を定めるなどして確実に実施し、管理台帳に点検結果や管理上必要な事項を記録します。
点検には「使用前点検」「定期点検」があるので詳細を見ていきましょう。
■使用前点検
墜落制止用器具は使用前に毎回「使用前点検」を行います。
墜落制止用器具を海上や沿岸地区など塩の影響を受けるところや、酸やアルカリが付着する恐れがあるところで使用する場合などは特に念入りに点検を行いましょう。
下で説明する点検項目に1つでも当てはまるものがあれば管理責任者に報告して使用を中止し墜落制止用器具を破棄、もしくは購入元に点検や修理を依頼してください。
■定期点検
墜落制止用器具は製造したメーカーで定められた期間ごとに「定期点検」を行います。
点検は使用者自身でも実施することができますが、場合によっては管理責任者(安全管理者)や専門知識を有する人が行うこともあります。
点検内容は使用前点検の項目と同様で、特別な項目が増えることはありません。
■点検項目
ハーネス、胴ベルト
点検個所 | 点検項目 | ポイント |
ベルト | ・摩耗、擦り切れ、切り傷、焼損、溶解、かび、変色がないか
・薬品、塗料などが付着していないか ・先端金具の変形がないか ・縫糸が切断されていないか |
・2mm(胴ベルト型は3mm)以上の摩耗、擦り切れ、切り傷、焼損、溶解などがないこと
・正しく装着したときに力を入れてゆるまないこと ・縫糸が1か所以上切断していないこと |
点検個所 | 点検項目 | ポイント |
バックル | ・変形、摩減、傷、サビ、腐食などがないか
・バネが折損や脱落していないか ・動作に異常がないか |
・深さ1mm以上の摩減、傷、亀裂などがないこと
・全体にサビが発生していないこと ・締まりが悪くないか ・リベットのカシメが摩減、変形していないか |
点検個所 | 点検項目 | ポイント |
縫製部 | ・摩耗、毛羽立ちがないか
・縫糸が切断されていないか |
・著しい摩耗、毛羽立ちがないこと
・縫糸が1か所以上切断していないこと |
点検個所 | 点検項目 | ポイント |
ベルト通し | ・摩耗、亀裂がないか
・なくなっていないか |
・著しい摩耗、亀裂がないこと |
点検個所 | 点検項目 | ポイント |
環類 | ・変形、摩減、傷、亀裂、サビなどがないか | ・D環固定板が割れていないこと
・深さ1mm以上の摩減、傷、亀裂が無いこと ・全体にサビが発生していないこと ・目視で確認できる変形がないこと |
点検個所 | 点検項目 | ポイント |
ラベル | ・ すべてのラベルが存在しているか | ・ ラベルの内容がきちんと確認できること |
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ランヤード
点検個所 | 点検項目 | ポイント |
フック | ・変形、摩減、傷、サビ、腐食などがないか
・バネが折損や脱落していないか ・動作に異常がないか |
・深さ1mm以上の摩減、傷、亀裂がないこと
・全体にサビが発生していないこと ・外れ止め装置が正常に開閉できること |
点検個所 | 点検項目 | ポイント |
ショックアブソーバー | ・カバーが破れていないか
・薬品、塗料などが付着していないか ・縫糸が切断されていないか ・墜落を防いだ等で大きな負担がかかっていないか |
・ショックアブソーバーが露出していないこと
・薬品や塗料の腐食によって汚れ、変形、硬化していないこと ・縫糸が1か所以上切断していないこと ・衝撃を受けて作動したものでないこと |
点検個所 | 点検項目 | ポイント |
ストラップ巻取器 | ・変形、摩減、傷、亀裂、サビなどがないか
・ストラップを勢いよく引き出してロックが効くか ・巻取器の取付ねじが脱落していないか |
・巻取り、引出しがスムーズにできること
・ベルト通し環が破損していないこと ・金属類が著しくさびていないこと |
点検個所 | 点検項目 | ポイント |
伸縮ストラップ | ・摩耗、擦り切れ、切り傷、焼損、溶解、かび、変色、ねじれがないか
・薬品、塗料などが付着していないか ・耳または幅の中に1mm以上の焼損が無いか ・紫外線による退色が無いか ・縫糸が切断されていないか |
・素手で触って確認できる摩耗、毛羽立ちがないこと
・耳または幅の中に1mm以上の切り傷、焼損、溶解などがないこと ・ストラップ自体が疲弊してねじれていないこと ・蛇腹の山部分が白く退色、または全体的に退色していないこと |
点検個所 | 点検項目 | ポイント |
帯ロープ | ・摩耗、擦り切れ、切り傷、焼損、溶解、かび、変色、ねじれがないか
・縫製部保護カバーが損傷していないか |
・芯の露出や1mm以上の摩耗、擦り切れ、切り傷などがないこと
・縫糸やアラミド芯意図が露出していないこと |
点検個所 | 点検項目 | ポイント |
三ツ打、八ツ打ロープ | ・摩耗、切り傷、焼損、溶解がないか
・キンクしていないか ・薬品、塗料が付着していないか ・さつま編み込み部がほどけていないか |
・ロープが摩耗して棒状になっていないこと
・1リード内に7ヤーン(糸)以上の切り傷、焼損、溶解が無いこと ・編み込み回数が3回未満になっていないこと ※赤芯入りロープを使用している場合は、赤芯が見えた段階で使用を中止してください。 |
一度でも大きな衝撃を受けた墜落制止用器具は外観に変化が無くても使用できません。危険なので絶対に使用しないでください。
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2.保管・お手入れ方法
墜落制止用器具は使用時だけでなく、保管や手入れにも注意しなければいけないことがあります。
劣化を防ぐためにもきちんと覚えておきましょう。
また、保管や手入れ内容は管理台帳に記録するようにしてください。
■保管場所
① 直射日光が当たらないところ
② 風通しがよく湿気の少ないころ
③ 火気、放熱体などが近くにないところ
④ 腐食性物質と同室でないところ
⑤ 塵、ほこりが少ないところ
⑥ ねずみなどの小動物が入らないところ
⑦ その他、機能や強度に悪影響を及ぼさないところ
■保管時の注意点
・ 高温(50℃以上)になる場所に長時間保管しないでください
・ 物品の下積み(下敷き)などによって傷や変形が起こらないようにしてください
■手入れ方法
使用後は次の手入れを行います。また、長期間使用しない場合でも定期的に手入れを行ってください。
1.フック、バックルなどの金属部分が水にぬれた場合はよくふき取ってください
2.付着した泥、埃などは取り除いてください
3.可動部には時々注油してください
4.ベルトなどの合成繊維部品が汚れている場合は、水を含ませた布などで軽く叩いて汚れを布に移してください
※乾燥は直射日光の当たらない風通しのよいところで自然乾燥させてください。
3.使用期間/買い替え、部品交換時期
墜落制止用器具は破損していなくても経年劣化によって強度が低下するので、同じものをずっと使い続けることはできません。
法令による使用期限や有効期限の規定はありませんが、製造元メーカーの業界団体による自主的な基準が設けられているのでご紹介します。
買い替えや部品交換を行った場合は、次回交換時期を判断するためにラベルなどに使用開始年月を記録しておきましょう。
■有効使用期限
ハーネス
胴ベルト ワークポジショニング器具 |
使用開始から3年 |
ランヤード
ストラップ |
使用開始から2年 |
ロープ | 使用開始から2年 ※推奨 |
ランヤード、ストラップ、ロープは紫外線による繊維強度が劣化に影響することから使用期限が短く設定されています。
点検項目にも記載していますが、ロープは赤芯が見えたら交換するようにしてください。
特に繊維ベルトは目視で確認できなくても紫外線で劣化していることがあるので2年を目処に交換しましょう。
4.破棄基準
使用前点検や定期点検を行って1つでも当てはまるもの破棄対象になるので使用を中止してください。
更に詳しく破棄基準を知りたい場合はメーカーごとに製品の写真や図付きで破棄基準を公開しているので、確認してみるといいでしょう。
破棄基準に当たる部分があれば新しい物と取り替えるか部品を交換しますが、部品交換時は必ず同一メーカーのものを使用してください。
[メーカー破棄基準掲載ページ]
タニザワ https://www.tanizawa.co.jp/support/download webカタログ内
サンコー http://www.sanko-titan.co.jp/safety_belts/ ページ内[点検と交換]
藤井電工 https://www.fujii-denko.co.jp/fall-prevention/replacement/ pdfファイル
まとめ
墜落制止用器具の性能を正常に保つためには点検や手入れを怠ってはいけません。
自分の命を預ける重要なものなので、きちんと点検をして万が一の時に自分の体を守れるようにしておきましょう。