【墜落制止用器具(安全帯)】労働災害について

労働災害

毎年どれぐらいの方が労働災害に遭っているかご存知でしょうか。また、その中で墜落・転落災害はどれくらい起こっているかご存知でしょうか。

普段の仕事で何気なく墜落制止用器具を使用して仕事していますが、高所作業を行う上でリスクとして墜落・転落の危険性があることは理解しておかなければいけません。

この記事では「墜落・転落災害」のほかに「何故事故が起こるのか」と「事故発生時の措置」について解説していきます。

 

1.墜落・転落災害

墜落・転落災害と聞くと数十メートルの高所から墜落・転落することを想像しますが、この災害に高さは関係ありません。ちょっとした段差や踏み台から足を踏み外して落下しても墜落・転落災害になります。この災害は重症や死亡に直結しやすいのが特徴で、挟まれ・巻き込まれや転倒といった他の災害に比べて非常に高い割合を占めます。

墜落・転落災害での死亡事故の多くを建設業が占めており、理由として挙げられるのが他の業種に比較すると墜落したときの落下距離が大きくなるため、死亡災害に占める割合が高くなることが挙げられます。

 

ちなみに、墜落・転落災害の具体的な災害事例やヒヤリ・ハット事例を知りたいのであれば、中央労働災害防止協会(JISHA)のホームページ「中央衛星情報センター」内でたくさんの事例が紹介されているので参考のために見ておくと良いでしょう。

公式HP:https://www.jaish.gr.jp/anzen/sai/tuiraku_saigai.html

 

墜落転落による死亡災害は年々減少しており、中でも建設業は30年前と比べると3分の1程度まで減りました。
これは、先行足場工法や先行手すり工法といった対策が普及したことが大きな原因ですが、建設業で発生している墜落・転落災害は非工業的業種(サービス業など)で発生しているものよりも比較的簡単に対策ができるということが挙げられます。非工業的業種で発生している墜落・転落災害の多くは、階段や踏み台から足を踏み外して転落したり、一時的な高所作業で不慣れだったりと、対策が取りづらいものになっています。

 

 

2.何故事故が起こるのか

労働災害が発生する原因は労働者の不安全行動のほかに、機械や物の不安全状態(事故が発生しやすい状態または事故の発生原因が作り出されている状態)があると考えられています。
たとえば、厚生労働省では不安全行動の類型として以下の12項目、不安全状態として以下の8項目を挙げています。

【労働者の不安全行動】

1.         防護・安全装置を無効にする
2.         安全措置の不履行
3.         不安全な状態を放置
4.         危険な状態を作る
5.         機械・装置等の指定外の使用
6.         運転中の機械・装置等の掃除、注油、
修理、点検等
7.         保護具、服装の欠陥
8.         危険場所への接近
9.         その他の不安全な行為
10.     運転の失敗(乗物)
11.     誤った動作
12.     その他

【機械や物の不安全状態】

1.         物自体の欠陥
2.         防護措置・安全装置の欠陥
3.         物の置き方、作業場所の欠陥
4.         保護具・服装等の欠陥
5.         作業環境の欠陥
6.         部外的・自然的不安全な状態
7.         作業方法の欠陥
8.         その他


また、「労働災害原因要素の分析(平成22年)」によると、労働災害発生の原因は次のようになっています。

①不安全な行動及び不安全な状態に起因する労働災害:94.7%
②不安全な行動のみに起因する労働災害:1.7%
③不安全な状態のみに起因する労働災害:2.9%
④不安全な行動もなく、不安全な状態でもなかった労働災害:0.6%

上の①と②を加えると、労働災害が発生する原因全体のうち96.4%が労働者の不安全な行動に起因されているので、労働災害が発生する一番の原因は「労働者の不安全行動」だと言えるでしょう。

 

3.事故発生時の措置

どんなにしっかりした安全衛生管理をしていても、事故が発生してしまう可能性はゼロではありません。
万が一、作業場などで事故が起こってしまった場合は、対応方法が各会社・各現場で取り決めがあるので従って行動しましょう。もし取り決めがされていなければ絶対に決めておいてください。参考に対応フローの例を掲載しておきます。

 

事故発生時の対応フロー(例)

① 現場対応

I. 被災者の救護
自分の身を守りながら被災者の救護を行います。倒壊など何かしらの原因によって事故が発生しているので、焦って近寄るなどして二次災害を発生させてはいけません。重大災害や救護が困難な場合は119番通報しましょう。

II. 被災者を病院へ搬送

III. 警察署・労働基準監督署など関係各所へ連絡(重大な労働災害の場合)
事故現場が散らかっているからといって片づけてはいけません。警察や労働基準監督署の現場検証があるため現場は保存しておきましょう。ただし、二次災害が発生してしまう恐れがある場合はこの限りではありません。

IV. 被災者の家族への連絡

 

② 状況把握と原因調査

I. 警察署、労働基準監督署の現場検証立会い

II. 警察署、労働基準監督署の事情聴取への対応

 

③再発防止策の検討と実施

I. 設備や道具の改善
設備や道具、機器の不具合によって発生した事故であれば、その設備は取り除くか交換・改良しなければ同様の事故が起こるかもしれません。

II. 作業手順書の改訂
設備に問題が無く、作業手順などに問題があって事故が発生した場合は、作業手順や方法の見直しが必要です。「今まで大丈夫だったから」という意見を聞くことがありますが、たまたま事故にならなかっただけで、またいつ発生してもおかしくありません。

III. 社内安全衛生教育の実施
作業者の安全意識の欠如などによって事故が発生したのであれば、手順を再検討した上で、作業者全員に周知して安全教育を実施する必要があります。

 

■もしもの時のために決めておくこと、まとめておくこと

・ AEDや担架など応急手当、介護のための設備、道具の置き場所(の確認)

・ 消防・救急、警察署、労働基準監督署の連絡先、対応担当者

・ 労働者の家族などの連絡先(緊急連絡先)

 

上記の3点は必ずまとめておき、特に上の2点は対応フローと併せて誰でも見ることができる場所に掲示しておくことが重要です。

 

まとめ

労働災害について解説してきましたが、災害や事故は起こらない・起こさないことが大切です。どんなに面倒でも正しい手順を守って作業を行い、常日頃から災害が発生する原因がないか設備や環境に目を光らせて、些細なことであっても対策をしておきましょう。

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